コラム



コラム4                  2004年 4月 12日
*今回は、歯周病のコワーイお話です。

最近、遺伝子の研究が大きな進歩を見せ、昨年は、ヒトゲノムの解読や、クローン羊、クローン牛、そして、とうとうクローン人間の話題まで新聞紙上を賑わしました。しかし、こういった華やかな研究だけでなく、遺伝子の解読によって、実に多くのことがわかってきました。今まではっきりと証明できなかった歯周病と全身疾患の関係がはっきりしてきたのです。その代表的なものが、動脈硬化を起因とする心不全、そして、糖尿病です。
 アメリカの歯科医師会の掲げる標語のひとつに、「フロス オア ダイ」と言うものがあります。すなわち、「デンタルフロス(糸ようじなど)を使ってよく歯を磨き、歯周病を予防しましょう、さもないと死にますよ。」という意味です。成人病と歯周病の関係は昔から取りざたされていましたが、しばらくはっきりとわかっていませんでした。しかし、最近になって、心筋梗塞から心不全に陥ってなくなった人の冠状動脈(心臓に栄養を与えている動脈)に発生した血栓(アテローム血栓)の中に、その人の口の中にいる歯周病菌と同じ遺伝子配列を持つ歯周病菌が数多く発見されるケースがたくさん報告されているのです。ですからアメリカでは、抜歯や、歯石除去の前に、口のなかを消毒することが当たり前になっているようです。
 糖尿病に関しても、歯周病とのかかわりが注目されています。歯周病菌の作り出す毒素が、人体の細胞中の遺伝子に作用して、インシュリンの働きをブロックしていることがわかっています。
 歯周病は、20歳代以上の成人の多くが罹患しています。その罹患率は、年齢が上がるほどに多くなり、50歳以上では、かなり重症化している人が多くなっています。歯周病は、生活習慣病であると同時に、感染症でもあり、ストレスなども歯周病を悪化させる重要なファクターになっています。いずれ、誰かからもらった歯周病菌が、原因で、心筋梗塞になったり、糖尿病になったことが証明されるようなことになると、「あの時、あいつとキスしたばっかりに私は心臓が悪くなった。こうなったのは、あいつがちゃんと歯を磨かなかったせいだ。訴えてやる。」なんてことになるかも。ご用心。




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